Essay 03
やらないことの経営
引き算から始める
ある年の総括に、私は最大の成果を「やらない決断」と書いた。やることより、やらないことが難しい。
やることは、増える一方である。機会は向こうからやってくるし、誠実に働くほど声は掛かる。だから経営の実務は、足し算ではなく引き算から始まる。無駄な負債、無意味な資産、使っていない肩書き、惰性の人間関係。定期的に棚卸しをして、切り捨てる。
判断軸はひとつでいい。私の場合、それは「私が自由になるかどうか」だ。
選択肢を増やす方、制限の少ない方を選ぶ。自由は孤独だ、ということも含めて引き受ける。
このサイトに「やらないこと」を明記しているのは、その延長である。資料だけのコンサルティング。世界観を毀損する最適化。ツールありきのDX。断る基準を先に公開しておけば、判断は速くなり、関係は誠実になる。
守りの仕事だけが数週間並んだら、並べ方自体を疑う。これも「やらない」の変種である。正しさの点検は必要だが、それだけの日々は、何かをやらないままでいるための言い訳になりやすい。